柳原三佳のブログ

交通事故・死因究明問題などを追及する柳原三佳からの情報発信。あるときはジャーナリスト、あるときはノンフィクション作家、でも、1日の大半はお料理と芝刈りが大好きな「主婦」してま~す!

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「朝日新聞」(2009.8.25) 私の視点

 本日の「朝日新聞」(2009.8.25)に掲載された、柳原三佳の記事を紹介します。


■私の視点
 「子供の虐待死 死因の情報を共有し防止を」 
  柳原三佳・ジャーナリスト


 まだあどけない子どものほおや背中に残るどす黒いアザ、棒でつつかれた無数の傷。おむつのまま箱の中に放置され、骨と皮の状態で見つかった赤ちゃんの遺体。6月に開催された日本法歯科医学会の第3回学術大会で、虐待死した子どもたちのスライドが次々と映し出されたとき、あまりのむごさに、身体が凍りつくような思いがした。

 ここ数年、虐待死する子どもの数が増えている。08年度に全国の児童相談所で対応した虐待件数は、過去最悪の4万2662件にのぼる。講演を行った広島大学法医学教室の長尾正崇教授は「子どもへの虐待は、1歳半検診、3歳児検診、保育園や幼稚園における歯科検診で、児童の態度、頭や顔、口の中の外傷や極度の虫歯の進行などに気付くことで、歯科医師による早期発見が可能だ」と訴えた。歯科領域ではすでに虐待の研究も行われているが、法医学の現場と地域医療や行政との連携がさらに進めば、子どもたちをもっと早く救うことができるのではないかと痛感した。

 しかし、そこには大きな壁が立ちはだかっている。私は数年前から死因究明制度に関する取材を続けている。いつも残念に思うのは、司法解剖で明らかになった貴重な情報が刑訴法上の「捜査の秘密」を理由に、その大半が非公開となってしまうことだ。
 例えば、酔っ払った父親が子どもを風呂で水死させるといった飲酒関連事故が時々発生する。もしそうした事例が公開されれば「親の飲酒後の子どもとの入浴は危険だ」と広く知らせることもできる。

 昨年、私はオーストラリアのビクトリア州にある「VIFM(州法医学研究所)」を取材した。ここには日本と違ってコロナー(検視官)制度があり、不自然な死については警察ではなくコロナーが主体となって死因を究明している。運ばれてきたすべての死体にCTスキャンや解剖、薬毒物検査を行い、法医学者や歯科法医学者、薬毒物の専門家らがチームとなって徹底的に死因の究明をしている。
 最も興味深かったのは、蓄積されたデータが社会に還元されていることだ。情報は匿名で共有化され、様々なキーワードによりコンピューターで検索、閲覧ができる。医療、製造物、交通、教育など色々な分野で、事件や事故の再発防止に生かされている。

 今月から裁判員制度が始まった。最高裁では悲惨な記録を目にした裁判員の心のケアとして臨床心理士らによるカウンセリングを実施するという。しかし、まずは悲惨な事件を未然に防ぐ方法を検討すべきだ。司法解剖を含めた法医解剖の情報の開示と共有化を進め、再発防止の観点から学際的に取り組めば、救える命はきっとたくさんあるに違いない。

  1. 2009/08/25(火) 15:17:46|
  2. ミカの日記

プロフィール

柳原三佳

Author:柳原三佳
<ジャーナリスト・ノンフィクション作家>
交通事故、司法問題等をテーマに執筆や講演活動を行う。「週刊朝日」などに連載した告発ルポをきっかけに自賠責制度の大改定につながったことも。2004年からは死因究明問題の取材にも力を入れ、犯罪捜査の根幹に一石を投じてきた。著書に「家族のもとへ、あなたを帰す ~東日本大震災 歯科医師たちの身元究明」「遺品~あなたを失った代わりに」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」「交通事故被害者は二度泣かされる」「自動車保険の落とし穴」「死因究明~葬られた真実」「焼かれる前に語れ」「交通事故鑑定人」「示談交渉人裏ファイル」「裁判官を信じるな」など多数。」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」は、NHKでドキュメンタリードラマ化された。「実父を医療過誤で亡くし、自らも医療過誤被害を受けた経験があり、現在は医療問題にも精力的に取り組んでいる。千葉県在住。自宅の裏庭に、「古民家(長屋門)」を移築し、スローライフも楽しんでいる。
■柳原三佳のHP http://www.mika-y.com/

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