柳原三佳のブログ

交通事故・死因究明問題などを追及する柳原三佳からの情報発信。あるときはジャーナリスト、あるときはノンフィクション作家、でも、1日の大半はお料理と芝刈りが大好きな「主婦」してま~す!

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なぜ、防げなかったのか……

 東京江戸川区で起こった、7歳男児の虐待死事件。
 昨日の報道を見るかぎり、すでに昨年9月の段階で歯科医師が異常に気付き、江戸川区の家庭支援センターに連絡していたというではありませんか!
 なぜここまできていながら、食い止められなかったのか?

 私は昨年、「朝日新聞」~私の視点~というコーナーに、同様の問題について執筆しました。
 せっかく医師と行政が連携しても、それが「実行」に移されなければ意味がありません。何においてもそうですが、行動すべきときは是が非でもすべきなのではないのか。
 大切な命は、二度と戻ってきません。

◆<小1虐待死>小学校、行政側に注意喚起せず 東京・江戸川 1月25日21時27分配信

 東京都江戸川区立松本小1年、岡本海渡(かいと)君(7)が両親から虐待され死亡した事件で、虐待が発覚した昨年9月以降、海渡君が長期欠席するようになったのに、同校が状況を区子ども家庭支援センターに連絡していなかったことが、25日の同校の会見で分かった。センターは「状況把握を学校に任せていた」と話す。専門家は「典型的な虐待のハイリスク家庭なのに、関係機関の連携が不十分だった」と指摘している。

 「パパにぶたれた。ママは見ていて何も言わない」。昨年9月、左ほおと両足のももにあざがあるのに気付いた歯科医に、海渡君は打ち明けた。いつもは元気な海渡君がしゅんとしていたという。

 歯科医師は同14日に同センターに通報し、校長らはその3日後、海渡君のアパートを訪問した。父の健二容疑者(31)は「うそをついたのでしつけの意識で殴った」と認め、「二度と殴らない。男の約束だ」と言い切ったという。だが、海渡君は9月に6日間欠席するなど、欠席が目立つようになった。

 担任の男性教諭(28)は海渡君の様子をみるため、12月に3回アパートを訪ねた。担任は海渡君の顔を見ようとしたが、母の千草容疑者(22)は拒んだという。両親は欠席させるたびに「頭痛がひどい」「実家に帰っている」と学校に連絡。同校は「欠席理由が明確だったので、センターに欠席状況を伝えなかった」と説明する。

 一方、同センターを所管する同区児童女性課の丸山みどり課長は「欠席が続いていると知っていれば、次の対応はできたかもしれない」と認めた。

 一連の対応について元大阪市中央児童相談所所長の津崎哲郎・花園大教授(児童福祉論)は「母親の再婚相手と暮らし、実家に預けられて育った海渡君の経歴からみると、虐待のハイリスク家庭だったと言える。昨年9月の時点で関係機関が連携し、支援策を講じるべきだった」と話す。

 

■昨年9月に暴行把握=区側に歯科医連絡-東京・江戸川の小1男児死亡
1月25日13時34分配信 時事通信

 東京都江戸川区で暴行を受けた区立松本小学校1年の岡本海渡君(7)が死亡した事件で、区側が昨年9月、父親の健二容疑者(31)の暴行を把握していたことが25日、区教育委員会への取材で分かった。
 区教委によると、昨年9月、区子ども家庭支援センターに、海渡君が通っていた歯科医院から、「顔がはれている」と連絡があり、センターは小学校に確認の電話をした。
 数日後、小原サナヘ校長(60)と副校長、担任の男性教諭(28)が家庭訪問。健二容疑者はたたいたことを認め、「二度とやらない」と約束した。学校側は警察への通報はしなかったという。
 区教委の担当者は「協力的で、保護者会にも積極的に参加しており、様子を見ることになった」と話している。
 


 下記は、昨年「朝日新聞」(2009.8.25)に掲載された、柳原三佳の原稿です。


■私の視点
 「子供の虐待死 死因の情報を共有し防止を」 
  柳原三佳・ジャーナリスト

 まだあどけない子どものほおや背中に残るどす黒いアザ、棒でつつかれた無数の傷。おむつのまま箱の中に放置され、骨と皮の状態で見つかった赤ちゃんの遺体。6月に開催された日本法歯科医学会の第3回学術大会で、虐待死した子どもたちのスライドが次々と映し出されたとき、あまりのむごさに、身体が凍りつくような思いがした。

 ここ数年、虐待死する子どもの数が増えている。08年度に全国の児童相談所で対応した虐待件数は、過去最悪の4万2662件にのぼる。講演を行った広島大学法医学教室の長尾正崇教授は「子どもへの虐待は、1歳半検診、3歳児検診、保育園や幼稚園における歯科検診で、児童の態度、頭や顔、口の中の外傷や極度の虫歯の進行などに気付くことで、歯科医師による早期発見が可能だ」と訴えた。歯科領域ではすでに虐待の研究も行われているが、法医学の現場と地域医療や行政との連携がさらに進めば、子どもたちをもっと早く救うことができるのではないかと痛感した。

 しかし、そこには大きな壁が立ちはだかっている。私は数年前から死因究明制度に関する取材を続けている。いつも残念に思うのは、司法解剖で明らかになった貴重な情報が刑訴法上の「捜査の秘密」を理由に、その大半が非公開となってしまうことだ。
 例えば、酔っ払った父親が子どもを風呂で水死させるといった飲酒関連事故が時々発生する。もしそうした事例が公開されれば「親の飲酒後の子どもとの入浴は危険だ」と広く知らせることもできる。

 昨年、私はオーストラリアのビクトリア州にある「VIFM(州法医学研究所)」を取材した。ここには日本と違ってコロナー(検視官)制度があり、不自然な死については警察ではなくコロナーが主体となって死因を究明している。運ばれてきたすべての死体にCTスキャンや解剖、薬毒物検査を行い、法医学者や歯科法医学者、薬毒物の専門家らがチームとなって徹底的に死因の究明をしている。
 最も興味深かったのは、蓄積されたデータが社会に還元されていることだ。情報は匿名で共有化され、様々なキーワードによりコンピューターで検索、閲覧ができる。医療、製造物、交通、教育など色々な分野で、事件や事故の再発防止に生かされている。

 今月から裁判員制度が始まった。最高裁では悲惨な記録を目にした裁判員の心のケアとして臨床心理士らによるカウンセリングを実施するという。しかし、まずは悲惨な事件を未然に防ぐ方法を検討すべきだ。司法解剖を含めた法医解剖の情報の開示と共有化を進め、再発防止の観点から学際的に取り組めば、救える命はきっとたくさんあるに違いない。
  1. 2010/01/26(火) 13:09:12|
  2. ミカの日記

プロフィール

柳原三佳

Author:柳原三佳
<ジャーナリスト・ノンフィクション作家>
交通事故、司法問題等をテーマに執筆や講演活動を行う。「週刊朝日」などに連載した告発ルポをきっかけに自賠責制度の大改定につながったことも。2004年からは死因究明問題の取材にも力を入れ、犯罪捜査の根幹に一石を投じてきた。著書に「家族のもとへ、あなたを帰す ~東日本大震災 歯科医師たちの身元究明」「遺品~あなたを失った代わりに」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」「交通事故被害者は二度泣かされる」「自動車保険の落とし穴」「死因究明~葬られた真実」「焼かれる前に語れ」「交通事故鑑定人」「示談交渉人裏ファイル」「裁判官を信じるな」など多数。」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」は、NHKでドキュメンタリードラマ化された。「実父を医療過誤で亡くし、自らも医療過誤被害を受けた経験があり、現在は医療問題にも精力的に取り組んでいる。千葉県在住。自宅の裏庭に、「古民家(長屋門)」を移築し、スローライフも楽しんでいる。
■柳原三佳のHP http://www.mika-y.com/

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