柳原三佳のブログ

交通事故・死因究明問題などを追及する柳原三佳からの情報発信。あるときはジャーナリスト、あるときはノンフィクション作家、でも、1日の大半はお料理と芝刈りが大好きな「主婦」してま~す!

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法医学者の活躍

 今、大阪にいます。
 昨日、千葉から一人で車を運転して、無事到着しました。
 ちょうど名古屋のあたりで、緊急地震速報が車のラジオから流れ、ドキッとしました。

 走行距離は約600キロ。
 車を運転しながら、
『今回の津波被害は、この距離すべてに及んでいるのだな……』
 と、改めてその範囲の広さ、被害の甚大さを実感しました。

 今回、いち早く被災地に入り、検死を行われた法医学者のインタビューが、m3に掲載されていましたのでご紹介します。
 岩瀬博太郎教授は、『焼かれる前に語れ』(WAVE出版・2007年出版)で、共著させていただいた先生です。
 本の中でもいろいろな問題提起をしてくださっていますが、大規模災害が予測されている日本では、たくさんの対策が急がれています。
 


<m3の記事より>

3月11日の東日本大震災では、死亡者数が既に1万人を超えた(2011年3月29日現在)。未曾有の大災害では、復興支援の動きが活発化する一方、犠牲者の身元確認作業も続く。警察の行う死体見分の立ち会い(検案)のためにも、多数の医師が被災地に赴いている。日本法医学会の広報渉外担当理事で、千葉大学法医学教授の岩瀬博太郎氏に、検案の現状と見えてきた課題についてお聞きした(2011年3月29日にインタビュー)。


――震災以降、先生ご自身および日本法医学会として、どう動かれたのでしょうか。

 3月11日の午後6時半ごろには、警察庁から日本法医学会に、「支援要請があるかもしれない」との第一報が日本法医学会の中園一郎理事長などに入っていました。日本法医学会では、1995年の阪神・淡路大震災後、1997年に「大規模災害・事故時の支援体制に関する提言」をまとめています(同学会のホームページを参照)。これは、大規模災害などに備え、連絡体制や要請があった場合の人員派遣体制などをマニュアル化したもの。これに沿って動いたのは、今回が初めてだと思います。
 震災当日、私は大学におり、大学の建物も相当揺れ、スタッフの安否確認などに追われました。スタッフに一通り連絡が取れ、一段落したのが午後11時ごろ。その時点ではまだ状況が分からず、犠牲者が50人程度との報道でしたが、その頃、日本法医学会の青木康博庶務委員長と協議の上、夜中に、会員のメーリングリストを用い、「ボランティアを募ろうと考えております」というアナウンスを流しています。その後、日本法医学会に、理事長および庶務委員長を中心に、対策本部が設置され、各地区理事の下で協力が可能な会員(医師および歯科医)の名簿作りに着手し、関係機関の要請を受け、順次被災地に会員を派遣しています。
 3月15日には、警察庁に2010年に設置された検視指導室の呼びかけで、日本医師会、日本歯科医師会、日本法医学会が集まり、今後の検案体制について検討しています。それ以降はそれぞれ役割を整理し、動くようになっていますが、3月11日から15日までの間は、各団体が独自に被災地に入っていた状況だと思います。今は、医師の立場では、日本法医学会の会員、日本医師会の会員、各県の警察嘱託医という三者が、死体検案に携わっていると思われます。日本法医学会の会員は約1000人で、うち医師は100人強。被災地にはおよそ1週間程度ずつ行き、既に3、4交代している状態です。

 ――先生ご自身は被災地に行かれたのでしょうか。

 3月12日に、千葉県警の車で岩手県の陸前高田市に、私も含め当教室の5人のスタッフ、および日大の法歯学の先生、計6人のチームで向かいました。携帯電話は通じず、ガソリンもなく、警察の車で行く以外にはありませんでした。
 最初は手探りでした。阪神・淡路大震災では、一番の被害を受けた神戸市には監察医制度があり、監察医主体の死体検案もあったかと思いますが、それとは異なり、今回の大震災では、法的に言えば、警察官が行う死体見分(行政検視)に立ち会い、医師としての意見を述べることが求められます。そして行政検視に伴う検案の結果を基に、死体検案書を書くのが医師の役割です。
 警察官が衣服など持ち物検査をし、衣服を脱がして身体所見などをメモし、指紋を取り、写真を撮影する。その際、身元確認の際には手術痕などは重要なので、そうした所見を見逃さないように、医師側からもアドバイスする。また採血を行い、DNA鑑定に備えるというのが、私たち医師が実施したことでした
 とはいえ、法医の日々の業務は、解剖と諸検査実施による極力正確な死因判定が主ですから、現実にはほとんど検査などできない死体見分と検案でどこまで意見を言ったらいいのか手探りでしたし、また犠牲者はあまりに多く、どこまで詳しくやったらいいのかなどを模索しながらやりました。また法歯学の先生は、ポータブルのX線装置も持参されたのですが、停電で使えませんでしたので、歯科診察に基づくデンタルチャートの作成と、デジタルカメラによる歯牙の写真撮影をしていました。
 私が被災地にいた3日半の間に、私も含め、医師3人で、約120人の死体見分に立ち会いました。体育館で、卓球台をついたての代わりに立て、片方のスペースで死体見分と検案、歯科所見の採取を行い、もう片方のスペースをご遺体の安置に使うというケースもありました。家族を探しに来た被災者が号泣する声を聞くのは、さすがに辛かったです。
 また地域によっても違いますが、岩手県は広く、移動に時間がかかるという苦労もあります。今、日本法医学会から派遣されている他大学のスタッフは、盛岡から沿岸部まで、車で片道3時間の距離を往復する日々だそうです。私たちの場合は、岩手県の遠野に宿泊することができたので、片道1時間半でした。

 ――犠牲者の大半は水死だったとお聞きしています。

 確かに、指定された避難場所に逃げたのに、亡くなったような方には、大きな外傷がある犠牲者は少なかったので、ほとんどで溺死を疑いました。一方、屋外で発見されたご遺体は、大小様々な損傷があり、死因判定は困難でしたが、これまで検案を終えた犠牲者では、溺死の疑いとされた事例が8、9割を占めるのではないでしょうか。しかし、今後、瓦礫の除去などが進み、屋外で発見される遺体が増えてくれば、溺死、圧死、外傷性ショックなど、死因の割合は今後、変わってくると思います。

 ――検案に携わる医師は不足しているのか、あるいは十分なのでしょうか。

 今回は先ほどお話した警察庁の検視指導室が、死体見分および検案において主導的な役割を果たしていたと思います。犠牲者が多数に上ると予想されたことから、全国の県警に呼びかけ、少なくとも各都道府県の検視係1チームずつ派遣しているようです。検視をする警察官が、ご遺体の衣服を脱がせ、写真を撮影し、身体の外表などを見るのに、10、15分かかります。各都道府県警察の検視係1チームには、2人の検視のできる警察官がいますので、現地で、検視のできるチームが計約100チームできれば、1日最大で約3000人の犠牲者の死体見分が可能な体制です。
 今は、多数の犠牲者が死体見分場所に運ばれた初期は過ぎ、比較的落ち着きつつある段階にありますが、今後も作業は続きます。日によって作業量には波があり、多数の犠牲者が一度に運ばれてくることもあれば、1日数体の時もあると伺っております。しかし、家族を探しに来る被災者のことを考えると、検視・検案の場所を集約化することも難しいようです。日本法医学会としては、今後、検視・検案への協力をいかに継続していくかが一つの課題です。
 また報道によれば、今は、約7割のご遺体について、身元が判明しています。当初はあまりに犠牲者が多く、対応しきれないことから、死体見分を省力せざるを得ないのではないかという話も出ていたようですが、警察庁の検視指導室と各都道府県警察は本当によくやっていると思います。
 しかし、今後は、遺体の外見や持ち物からの身元確認は難しくなってくることが予想されます。死後の日数が経過すると、ご遺体が腐敗するのは避けられない。また現在は血液を採取できますが、死後日数が経過すると採取はできなくなる。爪、あるいは歯でDNA鑑定を行うことになります。

 ――今後も見分・検案が続くとのことですが、現時点で既に浮かび上がった将来に向けての課題などがあればお教えください。

 今回の大震災の件で言えば、歯科医院とともにカルテなどが津波で流されてしまい、歯型による照合ができないケースがあると予想されています。知り合いの法歯学の先生によると、レセプト情報が、中央にあるサーバに集約されていて、照合する仕組みを作れば、照合がある程度可能ではないかとのことです。
 また、今後、死亡統計の扱いをどうするかという問題もあります。溺死か、家屋の倒壊による圧死か、その区別がつきにくいご遺体もあり、その辺りの判断は人によってばらつきがある。
 さらに、今後についてですが、日本法医学会の立場から言えば、先ほども触れましたが、どこまで、どんな形で死体見分に協力すればいいのか、また今回のような大震災の際に、どの程度医師として死体を診察し、またその結果から、死体検案書をどのように記載すればいいのか。この辺りを整理し、事前に訓練などもしながら、死体見分における警察官と、検案における医師の役割分担の明確化などが必要でしょう。
 そもそも法医が不足しているという問題もあります。大学の中にも法医学教室がない、あるいはあっても医師が1人のケースもあります。そういうところでは、協力したくても協力できません。
 現在、警察庁の「犯罪死の見逃し防止に資する死因究明制度の在り方に関する研究会」では、死因究明制度のあり方を検討しています(『「暴走する警察」から「大人の警察」へ、医療者が働きかけを』を参照)。私もその委員ですが、事故・犯罪を想定した議論をしてきましたが、この研究会から提言が出された後には、今回のような大災害を念頭に置いた議論も求められるでしょう。

  1. 2011/04/04(月) 10:03:39|
  2. ミカの日記

プロフィール

柳原三佳

Author:柳原三佳
<ジャーナリスト・ノンフィクション作家>
交通事故、司法問題等をテーマに執筆や講演活動を行う。「週刊朝日」などに連載した告発ルポをきっかけに自賠責制度の大改定につながったことも。2004年からは死因究明問題の取材にも力を入れ、犯罪捜査の根幹に一石を投じてきた。著書に「家族のもとへ、あなたを帰す ~東日本大震災 歯科医師たちの身元究明」「遺品~あなたを失った代わりに」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」「交通事故被害者は二度泣かされる」「自動車保険の落とし穴」「死因究明~葬られた真実」「焼かれる前に語れ」「交通事故鑑定人」「示談交渉人裏ファイル」「裁判官を信じるな」など多数。」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」は、NHKでドキュメンタリードラマ化された。「実父を医療過誤で亡くし、自らも医療過誤被害を受けた経験があり、現在は医療問題にも精力的に取り組んでいる。千葉県在住。自宅の裏庭に、「古民家(長屋門)」を移築し、スローライフも楽しんでいる。
■柳原三佳のHP http://www.mika-y.com/

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