柳原三佳のブログ

交通事故・死因究明問題などを追及する柳原三佳からの情報発信。あるときはジャーナリスト、あるときはノンフィクション作家、でも、1日の大半はお料理と芝刈りが大好きな「主婦」してま~す!

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名古屋ひき逃げ死亡事件・ご遺族の手記(その1)

 

 名古屋で起こったひき逃げ死亡事件のご遺族から、私のもとに届いたメッセージ(体験談)を、ここで数回に分けてご紹介します。

 大人の男性を車ではねて、車を止めることもせずそのまま走り去り、1時間半後に現場に戻りながら、「人とは気付かなかった」の一言がとおるのでしょうか……。
 また、事故の瞬間は後続タクシーのドライブレコーダーに記録されており、その映像から供述の真偽は検証可能なのに、なぜ?

 現在、署名活動も展開とのことです。
 秤谷さんのブログも合わせてご覧くださいませ。
●秤谷さんのブログ

★秤谷さんのメール  n.y-company@wine.plala.or.jp

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 私は名古屋市在住の、秤谷(はかりや)幸恵と申します。
 昨年の夏、義父がひき逃げ事件で亡くなり、その後、警察や検察の理不尽な対応と闘い続けてきました。
 現在は、全国悪質運転ZEROの会のメンバーとして、同じく名古屋市内で息子さんを悪質事故で亡くされた眞野哲さん、そして支援者の西川さんらと活動しています。
 うまくは言えませんが、父の命を絶対に無駄にはしたくない。少しでも、悪質な交通事故が減る事を願い、私たちの命がある限り戦う事を決めました。

 父が事故に遭うまでは、まさか自分たちが交通事故の遺族になるなんて想像もしていませんでした。
 でも、いざ当事者になったとき、積極的に必要な行動がとれたのは、それまでに得ていた情報や、先に辛い体験をされた交通事故遺族の訴えを耳にしていたおかげでした。
 ですから、私たちもこの体験多くの皆さんに知っていただきたいと思い、これまでの経緯を公開させていただきたいと思います。


●事故発生

 昨年、平成24年7月27日、名古屋市南区寺崎町前市道で事故は起こりました。
 その日、夜中に突然部屋の電気がついたので、私はびっくりして目が覚めました。
 ふと見ると、主人が立っていました。私が「どうしたの?」と云うと、主人は「父ちゃんが轢き逃げされた」と言いました。
 私は、「夜中に冗談はやめてよ」と言ったのですが、何だか様子がおかしいので、「お父さんは?」聞きかえしたところ、主人はぶっきらぼうに、「死んだ」「死んだ」と二回続けて言いました。
 急いで着替え、事故現場にむかいました。
 到着したそこは、もの凄い光景で、ただ唖然とするばかりでした。

 父は乗用車に左胸を轢かれ、数メートル引きずられたそうです。
 加害者は車を止めることもせず、道路の真ん中で倒れていた父を救護することなく、そのまま走り去りました。 そして1時間半たってから事故現場に戻り、自動車運転過失致死と道路交通法違反轢き逃げの容疑で逮捕されました。
 そのとき、「加害者は今パトカーに乗りました」という声が聞こえました。父が事故に遭う瞬間を見ていた、第一目撃者のK さんの声でした。
気がつくと、私はパトカーのほうに向かい、加害者に向かって興奮気味に叫んでいました。

「何で人を轢いて逃げたんだ!」

 しかし、パトカーはあわてて、加害者を乗せたまま本署に行ってしまいました。
 今思えば、その時はまだ、『逮捕』ではなく、『任意同行』だったそうです。

 私たちはその場に放置されたまま、どうしたらいいのかわからないまま、父の運ばれた名古屋市立大学病院に向かいました。

 病院の救命救急センターに到着してすぐ、父の部屋を訪ねました。
 私は父が、「幸恵、徳仁、おっせぇなぁ!」そう言ってくれると思っていました。
 でも、父は寝たまま、何も話しません。
 そこへドクターが来て、「左胸を触ってみて下さい」と言われました。おそるおそる触ってみると、父の胸はもう、ベコベコでした。
 「タイヤで踏まれたのか、轢いていかれたのか、とにかく、これが致命傷です。右足も複雑骨折していましたが、致命傷がはっきりしているので、レントゲンも撮っていません」ドクターはそう説明されました。

 病院で死体検案書をもらうまで、2時間くらい警察が来なかったので、ドクターもずいぶんピリピリされていたことを覚えています。
 ようやく警察が到着し、一番に渡されたのは、「被害者の手引き」でした。
「しっかり読むように」とだけ告げられました。

 警察官が検視をおこなっている間、私達は外で1時間位待っていました。夜中の3時頃でしたが、あまりに、突然の出来事だったので、会社でお世話になっている保険屋さんに電話をして、ことの次第を説明しました。
 その時私は、数年前に見た「スーパーモーニング」というテレビの特集を思い出しました。
それは、ジャーナリストの柳原三佳さんが出演していた『もう、泣き寝入りはしない』という交通事故の特集で、被害者が亡くなったり重傷を負ってしまうと、加害者の言い分だけが通って、真実が曲げられてしまうというものでした。
 事件によっては、警察や検察が証拠を捏造されたり、隠滅されることもあるというのです。
 なぜ、被害者の遺族がここまで、ここまで苦しめられるのか。でも、最後に真実を解明してくれるのは、事故の痕跡、証拠しかない……、そのことが強く印象に残っていたのです。

 とり急ぎ連絡を取った保険屋さんは私が17歳からの知り合いで、もう21年のおつきあいになります。色々な相談にのってくれる父親みたいな方でしたので、その人に、いの一番に相談しました。
 私は警察の話すことが、なぜか初めから信用できなかったのです。

 検視の後、警察が1時間位で出て来ました。
 警察官は私達に「お父さんの静脈の血液を3本貰いましたので、書類に署名してください」と言いましたが、私は、家族が同意する前に血液を抜いた事が許せず、「どういうことですか? 順番がおかしくないですか?」と言い、注射器等の写真を撮りました。

 その後、警察は父の携帯電話も貸してくれと言いましたが、私達は渡しませんでした。
 警察に協力をしないということではありませんが、父が亡くなったことを、父の友人関係やお客さん、生前お世話になった方々に連絡しなければいけなかったので、携帯電話を渡してしまうわけにはいかなかったのです。
 警察は「証拠、証拠」と騒いでいましたが、父の草履、服、入れ歯などが、事故の状況を全て物語っているのではないかと、そのとき私は思いました。

 大体、父はひき逃げ事件の被害者なのです。ドクターが胸の上を車が走った事は間違いないと言っているのですから、それが何よりの証言ではないでしょうか。
 すでに何もかも、順番が違うことに不信感でいっぱいでした。

 その時です、加害者はまだ逮捕されていないということを聞かされました。警察はそれでも「必ず、逮捕、拘留する」と言っていました。
 私たちはさらに不信感を覚えながらも、ただ、とにかく父を早く葬儀場に運んであげたかった。そして、家族に連絡しなければ、従業員やお客さんやたくさんの人に連絡しなければ……と、とにかく、色々な事を考えました。
その後、区役所に手続に行き、花屋さんに連絡し、果物屋さんに連絡をし、主人と二人になった時、はじめて加害者の話になりました。
 私はあのとき、警察官に制止されるまで、とっさに加害者の男をパトカーから引きずり降ろそうとしていましたので、加害者の顔は覚えておりました。
 たぶん三十代後半、私と年が変わらないかんじでした。きっと家庭を持ち、子供もいるであろう、だから、なるべく穏便に済ませようと話し合いました。
 ところが、父が亡くなって、お通夜、告別式と日にちが過ぎても、加害者からもその家族からも何の連絡もありません。加害者の父と加害者の妻から連絡があったのは、事故から6日後のことでした。
 あまりの誠意のなさに呆れ、許す気持ちも薄れかけていましたが、加害者の会社の所長、加害者の妻、加害者の父親、三人で事故現場の近くの喫茶店に行きました。まるで、他人事の様な謝罪でした。

 (つづく)



  1. 2013/05/14(火) 10:38:42|
  2. 読者からのメッセージ

プロフィール

柳原三佳

Author:柳原三佳
<ジャーナリスト・ノンフィクション作家>
交通事故、司法問題等をテーマに執筆や講演活動を行う。「週刊朝日」などに連載した告発ルポをきっかけに自賠責制度の大改定につながったことも。2004年からは死因究明問題の取材にも力を入れ、犯罪捜査の根幹に一石を投じてきた。著書に「家族のもとへ、あなたを帰す ~東日本大震災 歯科医師たちの身元究明」「遺品~あなたを失った代わりに」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」「交通事故被害者は二度泣かされる」「自動車保険の落とし穴」「死因究明~葬られた真実」「焼かれる前に語れ」「交通事故鑑定人」「示談交渉人裏ファイル」「裁判官を信じるな」など多数。」「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」は、NHKでドキュメンタリードラマ化された。「実父を医療過誤で亡くし、自らも医療過誤被害を受けた経験があり、現在は医療問題にも精力的に取り組んでいる。千葉県在住。自宅の裏庭に、「古民家(長屋門)」を移築し、スローライフも楽しんでいる。
■柳原三佳のHP http://www.mika-y.com/

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